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2020年4月施行の意匠法改正により、「内装の意匠」が新たに意匠登録の対象として明文化された。これは、意匠制度の長年の課題であった「空間的デザインの保護」に初めて明確な法的枠組みが与えられたことを意味し、実務上も制度運用の大きな転換点となっている。
改正前の意匠制度は、「物品の形状、模様、色彩」など、主として動産やその部分を対象としており、たとえば店舗や事務所などの内装全体に表れる統一的なデザイン性については、意匠制度では十分に保護することができなかった。そのため、企業はブランドイメージを空間に反映させたとしても、模倣店舗や類似演出に対しては実効的な権利行使が困難であった。
こうした問題を踏まえ、改正法では新たに意匠法第8条の2が設けられ、「店舗、事務所その他これらに類する施設の内部の構成についての意匠」が保護対象となった。これにより、什器や壁面、照明、床材など複数の要素から構成される空間について、全体として統一的な美感を有していれば一意匠として登録可能となったのである。
この制度は、単なる物理的集合体ではなく、視覚的に「一つの空間」として認識されるかが審査の重要なポイントとなる。審査基準においては、次の三つの要件が明確に示されている。
1. 施設の内部であること
空間は、床・壁・天井に囲まれた内部空間である必要がある。屋外空間は対象外。
2. 複数の構成要素が含まれていること
什器、構造物、設備、画像など、単一ではなく複数の要素で構成されること。
3. 統一的な美感を起こさせる構成であること
色彩・形状・配置に秩序や調和があり、空間として視覚的一体感があることが求められる。
たとえば、回転寿司チェーンの店舗内装では、座席配置、表示装置、照明、カウンター形状などが全体としてブランドイメージを形作っており、それが意匠として登録された。あるいは、書店の内装であれば、本棚、照明、天井の意匠に統一性が認められ、閲覧空間全体としての美感が評価された。
出願においては、特に図面作成の工夫が求められる。内装の意匠は立体構成物の集合体であり、構成要素間の配置関係を明確に示す必要がある。そのため、斜視図(パース図)は事実上必須であり、可能であれば床面・壁面・天井のいずれも描かれることが望ましい。また、願書の「意匠に係る物品の説明」欄では、構成要素の役割や相互関係、全体の演出意図について簡潔かつ具体的に記載することが推奨される。
内装の意匠制度は、企業の店舗戦略や施設ブランド戦略において、空間そのものを差別化要素として法的に保護しうる手段を提供する。
建築の内装の意匠登録が可能となり、既に多くの登録事例があります。つばめ特許事務所では、多くの意匠登録を手掛けております。建築物やその内装の意匠登録についても承っております。お気軽にお問い合いただければ幸いです。