翻訳が完成していないまま、国内移行期限が近づいている
翻訳が未完成だから直ちに移行できないとは限りません。
例えば、こんな場合国内移行の数日前に依頼を受けたものの、日本語訳がまだなく、明細書の分量も多い場合。
提出と翻訳の進め方
- 日付と期限最先の優先日と国際出願日を資料で確認し、国内移行と審査請求の期限を別々に管理します。
- 国内書面の先行提出国内書面を先に提出し、翻訳文を後日提出できるか確認します。国内書面の提出が30か月期限前の最後の2か月以内であれば、翻訳文はその提出日から2か月以内に提出できます。
- 翻訳の工程翻訳に必要な原稿・補正書類をそろえ、提出までの工程を具体的に決めます。日本語訳がすでにある場合も、使用する版と必要な確認作業を先に整理します。
当所は回復手続を前提とせず、期限内の提出を優先します。出願番号と資料を基に、次に必要な対応を速やかに検討します。
原文の不整合を、翻訳文作成・出願前チェックで整える
日本の特許庁は、請求項の明確性と明細書による裏付けを厳格に審査します。
用語や参照先の不整合が残り、請求項の意味や明細書・実施例との対応が不明確な場合は、記載要件に関する拒絶理由につながります。原文にある不整合も、日本での翻訳文作成・出願前チェックで整理することが重要です。
例えば、こんな場合原文では初めに「a control unit」と記載されているのに、後の記載は「a unit」や「the unit」になり、同じ制御部なのか、別の部なのか判然としない場合。また、請求項の文言と実施例の回路との対応が明示されていない場合。
翻訳文作成・出願前チェックでの対応
- 原文の不整合請求項・明細書・図面を照らし合わせ、原文にある「control」の脱落や呼び方の揺れを見つけます。同じ構成を指していることが文書全体から確認できる場合は、日本語の用語をそろえて意味を明確にします。
- 初出・再出と参照関係原文のaとthe、初出・再出の関係をたどり、同じ要素を指すのか、別の要素なのかを整理します。「前記制御部」などの参照表現を適切に用い、意図が判然としない箇所はご依頼人に確認して、構成要素同士の関係が明確になる日本語に整えます。
- 請求項と実施例請求項の文言と、実施例の部材・機能・符号との対応を整理します。原文全体の開示に基づき、翻訳文で明確にできる箇所を整え、必要に応じて補正も組み合わせて、日本での出願に備えます。
原文に残る不整合を、翻訳文作成・出願前チェックで拾って整理します。意図した構成と実施例との対応が伝わる、日本での審査を見据えた出願書類に整えることも、当所の役割です。
マルチマルチクレームを、必要な組合せを残して整理する
引用関係を単に削ると、有用な請求項の組合せまで失うことがあります。
請求項の引用関係の例請求項4請求項1〜3のいずれかを引用
→請求項3請求項1又は2を引用
請求項4は、他の多数項引用請求項を引用しています。
例えば、こんな場合請求項3が「請求項1又は2」を引用し、請求項4が「請求項1〜3のいずれか」を引用している場合。請求項4は、他の多数項引用請求項を引用する多数項引用請求項になります。
請求項の整理方法
- 請求項の引用関係まず全請求項の引用関係を図や一覧で追い、問題となる引用と、権利化したい構成の組合せを特定します。多数項引用請求項そのものが一律に禁止されているわけではありません。
- 組合せを残す方法引用先の整理、単一従属への変更、請求項の分割などを比較します。問題の引用を機械的に削るだけで、有用な組合せを失わないようにします。
- 記載の根拠と費用補正後の内容が原文の記載の範囲内かを確認し、請求項数が増える場合は審査請求料などへの影響も併せてご説明します。
この制限は、原則として国際出願日が2022年4月1日以降のPCT出願に適用されます。
期限を過ぎても、要件と申請期限を満たせば回復できる場合があります。
例えば、こんな場合日本への国内移行を失念していた、又は翻訳文提出・審査請求の期限を過ぎていることが判明した場合。
回復の可能性と手続の検討
- 未了の手続と期限まず、国内書面・翻訳文の提出と官費の納付状況を確認し、未了の手続、元の期限と手続が可能となった日を整理します。国内移行に関する救済と審査請求の救済は別々に検討し、回復申請を行える期間が残っているかを判断します。
- 回復要件の検討2023年4月1日以降に期限を徒過した対象手続では、回復要件が「故意によるものでないこと」に緩和されています。ご依頼や連絡の記録、期限を認識した経緯などから、適用の可否と必要な説明を整理します。
- 理由書と追完手続回復理由書に、期限内に手続をしなかった理由、手続が可能となった日、故意の未手続でないことを具体的に記載します。適用される期限内に、翻訳文の提出又は審査請求の追完、理由書の提出、必要な手数料の納付を進めます。
対象となる救済には、原則として手続が可能となった日から2か月以内、かつ元の期限から1年以内という制限があります。翻訳文提出が回復できても、審査請求期限が自動で延びるわけではありません。自動的な回復ではないため、発覚した時点ですぐにご相談ください。
英語以外の審査経過も読み取り、日本の審査対応に生かす
多言語の審査経過から、技術的な論点と反論の内容を読み取ります。
OA・応答書・請求項の補正原文の審査経過英語・ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語
→日本での審査対応技術的な論拠と請求項の変更を、日本の実務に照らして評価
例えば、こんな場合ドイツ語や中国語のOAに対する反論・補正の経緯が、英語の要約だけでは十分に伝わらず、どの技術的相違が判断につながったのか分からない場合。補正後の請求項には、その相違がどう反映されたかが示されています。
原文の審査経過をどう評価するか
- 多言語の原文評価各国のOA、応答書、補正後の請求項と引用文献を原文で検討します。原文の技術用語や論理のつながりを読み取り、どの技術的な相違、論拠、請求項の変更が審査官の判断につながったのかを把握します。英語の短い要約だけでは伝わりにくい内容も評価します。
- 日本の審査を予測日本には長年にわたる日本語の特許文献の蓄積があり、他国の調査では見つからなかった文献が日本の審査で引用される場合があります。こうした文献に加え、日本の明確性・サポート要件を考慮し、必要な自発補正を提案します。
- 反論と補正の方針日本のOAに対しては、各国での議論と日本の審査官の判断を照らし合わせ、引用文献との相違、組合せの論理、発明の効果を具体的に反論します。補正が必要な場合も、事業上重要な範囲を残す方針でご相談します。国際調査機関の見解書や他国の拒絶理由が不利でも、それだけで日本の結論が決まるわけではありません。
英語に限らない各国の審査経過を評価できることも、つばめの強みです。その内容を日本の特許実務に照らして検討し、登録につながる意見書・補正書を組み立てます。
出願前に公開していた発明について、日本で保護できるか
優先権の期限と、日本の新規性喪失の例外の期間は、別の問題です。
仮想事例 · 公開からの経過期間発明を公開0か月
第一国へ出願2か月後
PCT出願14か月後
例えば、こんな場合発明を公開した2か月後に第一国へ出願し、その12か月後にPCT出願したため、国際出願時には公開から14か月が経過している場合。
公開日と出願日から検討すること
- 公開と出願の時系列公開日、公開内容、公開した者と、第一国出願日・国際出願日を並べて確認します。通常の外国優先権を主張するPCT出願では、日本の新規性喪失の例外の期間は原則として公開から国際出願日までの1年であり、第一国出願日が1年以内というだけでは足りません。
- 証拠と必要な手続例外の対象となり得る場合は、公開した内容と出願発明との関係を整理し、公開日・内容などを示す証拠を準備します。日本での適用申請・証明書提出の期限を確認し、必要な手続を行います。
- 公開されていない特徴例外を利用できない可能性がある場合も、公開に含まれていない技術的特徴や改良部分があるかを検討します。公開済みの範囲と、別途保護を検討できる範囲を区別してご説明します。
公開から国際出願日までの期間によっては、国内移行の時点ですでに例外を使えない場合があります。国際段階で申立てをしていても、日本で必要な証明手続は別途確認します。
審査請求料の減免と、審査前の準備を組み合わせて検討します。
中小企業等・個人・大学等が利用できる審査請求料の減免
所定の要件を満たす中小企業等・個人・大学等は、日本の審査請求料の軽減・免除を利用できる場合があります。中小企業は通常額の1/2、小規模企業・中小スタートアップ企業は所定の要件を満たす場合に1/3へ軽減されます。
要件を満たす中小企業1/2
要件を満たす小規模企業・中小スタートアップ企業1/3
数字は軽減後に納付する審査請求官費の割合です。
当所は減免制度の要件や申請手続にも精通しています。利用できる制度を見落として不要な官費負担が生じないよう、適用条件の確認から申請まで対応します。
WO・PCT番号と出願人名をお知らせください。適用可能な区分を検討し、減免後の費用と必要な手続を個別にご案内します。
減免後の費用を相談 →
適用条件と申請時期
業種、資本金、従業員数、設立時期、大企業との支配関係などを確認します。個人は所得等、大学等は機関や研究者としての資格も確認します。共同出願は各出願人の資格と持分により別途計算します。減免は審査請求時に申請する必要があり、後から遡って申請することはできません。
必要な権利範囲を考え、審査前に請求項を整理する
審査請求料は請求項数によって変わります。重複や事業上の必要性、日本の引用形式の規則を確認し、重要な保護範囲を維持できる整理方法をご相談します。料金だけを理由に必要な請求項を削ることは避けます。
予想できる記載上の問題を、翻訳・出願前に整える
原文の用語の不統一や構成要素の記載漏れ、請求項と実施例の対応関係を確認します。日本の明確性・サポート要件を踏まえて書類を整え、避けられる拒絶理由と追加の対応費用を抑えるよう努めます。
制度の詳細と特許庁の案内
一部の中小企業等には年度当たり180件の上限があります。小規模企業・中小スタートアップ企業・大学等はこの上限の対象外です。減免は特許庁の官費に関する制度で、関連する当所手数料は別途ご案内します。
特許庁:対象者・軽減割合・外国の出願人 ↗
特許庁:年間の適用件数と例外 ↗